名義のいかんを問わず、故人が実質的に所有していた有形、無形の財産が、遺産分割の対象となります。
ただし、死亡保険金や死亡退職金は指定された受取人に支払われますので、この遺産分割の対象から除外されます。この場合の指定受取人が「法定相続人」となっていれば、該当者の話し合いで各自の取り分を決めます。しかし、これは遺産分割とは明確に区分されます。
遺産分割について
(1)遺産分割の対象
(2)遺産の時価調査
遺産分割は、遺産の時価をもとに行うのが通例です。そこでここでは、時価をつかみにくい土地と建物につき、時価の求め方を示すことにします。但し、実務上は相続税評価額をベースに遺産分割を行うケースが多いようです。
- (1)土地
- 付近の売買事例、不動産の店頭案内、新聞の折り込みなどにより、坪当たりの時価を推定します。この方法がとれない場合は、土地の相続税評価額(国税庁の通達に従って求める)を求め、これを0.8で割り戻したものを時価とみます(相続税評価額は時価のおよそ8割といわれています。)
- (2)建物
- 建物の固定資産税評価額を市・区役所から入手し、これを0.6で割り戻したものを時価と見ます(固定資産税評価額は時価の6割前後といわれています)
- (3)マンション
- 土地・建物の相続税評価額を別々に求め、その合計額の2倍を時価とみます(相続税評価額の合計額は時価の5割前後といわれています。)
(3)遺産分割の協議
遺産分割に当たっては、次の点に留意します。
- (1) 遺言書で各自の取得財産が指定されている場合は、それに従う。
- (2) 遺言書がない場合は、相続人の話し合いで誰が何を相続するかを決めます。
- (3) 相続人の中に未成年の子供がいる場合には、その者の特別代理人を選任しなければなりません(家庭裁判所へ申し立てます)。
- (4) 故人の財産の維持や増加に特別の寄与をした相続人はその寄与に見合う格別の配慮を請求できます。
- (5) 葬儀、法要、遺産調べなどで特に苦労した相続人に対してはそれなりの配慮をするのが望まれます。
- (6) 死亡保険金や死亡退職金は遺産分割の対象になりませんが、公平な遺産分けとするにはこれらを遺産に上乗せし、その上で各自の法定相続分を試算することが望まれます。
- (7) 相続人全員の同意があれば、法定相続分を無視した遺産分割も可能です。
- (8) 話し合いがどうしても成立しない場合は、家庭裁判所の調停や審判を受けます。
- (9) それでもうまくいかない場合は、裁判で決着をつけます。
(4)遺産分割の時に頭に入れておきたいポイント
遺産分割は相続人の話し合いで決めるのはもちろんですが、分割のやり方次第で相続税を減額できるケースもありますので、税理士からアドバイスをうける事も必要だと思います。
以下にそのポイントを紹介しておきます。
- (1) 配偶者の相続する割合については、一次相続だけでなく二次相続を通算して、有利・不利に判定をする。
- (2) 配偶者は、小規模宅地の評価減を受けない方が有利な場合もある。子が受けた方がよい。
- (3) 1区画の土地を別々の相続人で分割取得する事で、相続税評価額を低くできるケースがある。
- (4) 自社株の評価は、遺産分割の仕方によっては配当還元方式で低く評価できる事もある。
(5)遺産分割の方法
遺産分割は以下の方法を色々組み合わせて行います。
- (1)現物による分割
- 土地は長男、家屋は妻というように、特定の財産を特定の相続人が相続する方法です。
- (2)債務負担による分割(代償分割)
- 長男が1人で家屋敷を相続する代わりに、次男と三男には長男が金銭を支給するというような分け方をいいます。
- (3)換価による分割
- 遺産を売却し、その代金を分け合う方法です。
- (4)共有による分割
- 土地は妻と長男が2分の1ずつ相続するというように、遺産の全部または一部を共有しておく方法です。
(6)遺産分割協議書の作成
遺産分割に全員の同意が得られたら、ただちに遺産分割協議書の作成に入ります。
この協議書には相続人全員が署名し、印鑑証明を受けた実印で押印します。未成年者の場合は特別代理人が署名・押印することになります。
税務調査で申告漏れ財産が発覚した場合は、その発覚した財産を誰が相続するかを協議し、その結果を同じように協議書の形にまとめます。なお、協議書の原本を相続人の全員が保管できるよう、作成通数に留意します。
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